little star's memory

競プロ、なぞなぞ、その他

でぶ群論

この記事はジョークです。真面目に読まないでください。

でぶばんわ!

この記事は「でぶ Advent Calendar 2022」の13日目の記事として書かれました。

でぶを侮辱する意図はありません。(おことわり)

でぶの対称性

ここにでぶがいます。

でぶ

このでぶは左右反転しても形が変わりません。しかし上下反転すると変わってしまいます。これはでぶにとってつらいですね。なので、どういう操作をしても形が変わらないか、というところに注目します。これが対称性です。

仮に正六角形のでぶがいたとすると、対称性は「回転」「反転」「何もしない」など、全部で12種類あります。

正六角形は2次元のでぶですが、3次元の方がよりでぶらしいですね。例えば立方体のでぶには24種類の対称性があります。

このように対称性の集まりのことをといいます。

群の原材料

正六角形の対称性には「回転」「反転」があると説明しましたが、回転だけを考えても群になります。このようなものを部分群といいます。「何もしない」と1つの反転という2つの対称性も部分群です。そして元の群はこの2つの群の「積」に分解することが知られています。

これを繰り返せば群をどんどん分解していくことができます。ですがこれ以上分解できない群というのが現れます。このような群を単純群といいます。

単純群はこれ以上分解できない群で、すべての群は単純群の組み合わせて作ることができます。素数と似ていますよね。もっとでぶにわかりやすく説明すると、ハンバーガーはバンズやパティなどを組み合わせてできている、ということです。

群を分類する

有限な単純群を分類しようという動きが始まりました。研究を進めると新しい単純群がいろいろ見つかっていきました。そうして、1980年代に有限単純群の分類が完了したことが宣言されました。

ところがそうではありませんでした。証明に足りない部分があったのです。結局それが埋まったのは2004年のことでした。足りなかったのはquasithin groupと呼ばれるものの分類でした。quasiは偽物、thinは痩せているという意味なので、これはつまりでぶということなのでは…?

有限単純群の分類定理はとても大きな定理です。証明は1万ページ以上あると言われています。

最もでぶな群

有限単純群の中で特に興味深い群が、モンスターと呼ばれる群です。散在型単純群と呼ばれるクラスの中で最もでぶな群です。その大きさは

808,017,424,794,512,875,886,459,904,961,710,757,005,754,368,000,000,000

です。まさにでぶ!

最初の方で2次元や3次元のでぶを考えましたが、このモンスターはそのようなでぶの対称性として考えることはできません。ではどのような対称性かというと、196883次元の対称性として現れます。196883次元のでぶ、想像できませんね。

モンスターにはフレンドリージャイアントという別名もあります。でぶは怖くないよ、というメッセージでしょうか。

でぶな予想

モンスターは存在することが証明される前から、もし存在するとしたらどんな性質を満たすのかが研究されていました。196883次元というのもそのうちの1つです。

話は変わりますがモジュラー形式と呼ばれる世界にj関数というものがあります。このjをqというパラメータに関するべき級数として展開します。すると-1次の係数が1、定数項が744、そして1次の係数が196884となります。

何か見覚えがありますね。モンスターは196883次元の対称性として現れると説明しましたが、それと1だけしか違いません。

これには何か意味があるのではないか!?そういった問いから生まれた予想をムーンシャイン予想といいます。ムーンシャインとは「ばかげている」という意味です。モンスターとj関数は全く別の世界の話で、関連があるとは思われていませんでした。「これはただの偶然の一致だ。2つが結びついているなどという考えはばかげている!でぶだ!」と考える人もいたとか。(でぶは勝手に付け足しましたが)

しかしj関数の2次、3次の係数もまたモンスターの対称性と結びついていることが明らかになっていきました。これは偶然の一致ではなさそうです。

で物理

モンスターとj関数が結びつくだけでも不思議ですが、さらに不思議なつながりがあります。それは物理とのつながりです。

共形場理論というものと関わるそうです。物理はさっぱりなので詳しくは書けませんが、共形場理論に登場する頂点作用素というものを用いていい感じの代数系であるムーンシャイン加群がフレンケル・レポウスキー・ムアマンによって構成されました。一方、ボーチャーズは頂点作用素が登場する代数系を数学的に厳密に定義しました (定義はのちに変わっていきますが)。ある種の無限和が登場しますが、無限和はきちんと扱わないといけないですからね。物理の人は極限と積分を勝手に交換する人ですし…。

ムーンシャイン加群についていろいろ調べることで、ムーンシャイン予想は無事解決されました。めでたしめでたし。

ボーチャーズはこの業績でフィールズ賞を受賞しています。

その後

有限単純群の研究はモンスターの発見によって終わりを迎えたかと思いきや、ムーンシャインによって新たな始まりを迎えました。現代でも様々な研究が行われています。特に、マシュームーンシャインやアンブラルムーンシャインと呼ばれる不思議な現象が発見されています。

個人的には頂点作用素が組合せ論にも表れることに興味を持っています。3次元ヤング図形の母関数はマクマホンが導出しましたが、頂点作用素を用いても導出できるらしいです。勉強したら月刊組合せ論Natoriの記事にしたいと思っています。

というわけで、「でぶ Advent Calendar 2022」の記事でした。これでよかったのでしょうか?

おまけ

本当はでぶにちなんで最高ウェイト理論のことを書きたかったのですが、勉強が間に合いませんでした。